いつか いつかの日の為に
















面倒くさがりなあたしにとって、恋する事なんて一番めんどくさい事だと思ってた。








































そしたら恋はめんどくさいだけじゃなかった。














































辛くて。苦しくて。でも、やめられない。中毒みたいだった。




















































いちご

























































あたしの名前は








人間だけど、今はエルフの森でエルフと共に住んでる。












何で人間なのにエルフと住んでるかって聞かれると、昔の事すぎてよく思い出せない。












ただ、あたしも昔は人間世界に住んでいて、洪水が起こって家族と離ればなれになったから連れて来られたんだって聞いた。

















でも、覚えてないくらい昔の事だから。・・・「家族」とか言われてもよくわからない。











































だって、あたしの家族は、彼一人なんだから。

































































「あーぁ・・次、いつアラゴルン様来るんだろ・・・」














闇の森。あたしは本日5回目くらいであろうそのセリフを呟きながら湖の周りで一人遊んでいた。








エルフ、人間、ドワーフが集うその会議は、たいてい2ヶ月ごどに行われていた。












「平民」であるあたしにとっては、ンな会議なんて耳にする程度でかけ離れた存在だったが、その日が唯一の「人間と触れあう日」であったために、結構いつも心待ちにしていた。















「まだ一ヶ月あるかな。それともあと何週間かな。一週間は待たないとダメかな・・いつなんだろ」





「・・・・・次の2週間後の会議ですよ」




「・・・!レゴラス様ッ」

















ふと後ろから声がしたと思うと。ここの森の王子 レゴラスが
不意打ちに、そう静かな口調で答えた。
















「い、いらっしゃったんですか」




「あぁ、通りすがっただけですけど・・・すみません驚かせてしまって」









彼はそう言って、綺麗な綺麗なその顔を微笑ませる。







見慣れない彼のそういう笑顔を久々に見て、あたしは何となく凝視できなくて目をそらした。







喋った事今までも何度もあったけれど、二人きりは初めてかもしれない。


























「隣に座ってもよろしいですか?」




「はっはい!!どうぞどうぞっっ」












彼は黙って着ていたコートを脱ぎ、座り込んだ。ー彼の細い身体が風にふかれて寒そうに見えた。
















「これを着なさい。じきにもっと寒くなる」








レゴラス王子は、その脱いだコートをあたしの肩にかけながら、そう当然のように言った。







「あ、ありがとうございます・・・あったかいッス・・」





「・・・は、アラゴルンの事が好きなんだね」





「えっっ」
















また、そう笑顔で不意打ちに言うものだから、私は驚いて彼を見る。












「好き、とかじゃない、なんていうか、憧れてるっていうかぁ・・・」




「・・・どういうところに?」




「え!?ええと・・アラゴルン様は素敵だし、優しいし・・かっこいいし、背も高いし、男らしくって・・・格好いいし・・」
















あたしは真っ赤っかになりながら必死でそう言うと、彼はまたフ、と微笑んで「それで?」と言った。




















「そ、それで、彼は人間でしょ?それでいつか、彼は言ったんです。”人間 皆家族だ”・・って。


すごく、すっっごく嬉かったんだ。あたし、家族いませんから、だから、あぁ、じゃぁアラゴルン様もあたしの家族なんだって思うと、

もう嬉しくて嬉しくて仕方なかった。」
















「・・・へぇ・・・」












「それでいつか、あたし聞いたんです。もう、ずっとずっと昔だけど・・・”いつか、きっとあたしをこの森に迎えに来て、そして貴方と住まわせてください”って・・・・アラゴルン様、笑って「あぁ」って言ってくれたんですよ」










あたしはものすごくニヤニヤしながら、”何でこんな事王子にぶっちゃけてんだろ?”と思いながら喋った。































「へ、ぇ・・・じゃぁお嫁に行くッて事?」






「そそそそっそん〜〜んな事っっあるわけない・・・です、よ・・・きっと」








「・・・じゃぁ、は信じてるんだね」








「・・・・・・ハァ」
























レゴラス王子は、その絶やさない笑顔のまま立ち上がり、「早く館に戻っておいで 冷えますよ」 とだけ言って行ってしまった。







「あ、コート!レゴラス様、コート!」










私はそう叫んだけれど、もう彼は遠く向こうへ行ってしまっていた。













不思議な方だ、とあたしはそう思った。




すっっごく綺麗な顔で、いつも笑顔でいるのに、何かこう・・・・冷めてる。








あたしは本当に冷たくなった風を体中に浴びながら、立ち上がって館に戻る事にした。
























































〜〜良いお知らせだよ!!!次の会議、4日後になったんだって!!アラゴルン様、4日後に来るよ!!」
















朝早く、あたしの一番の友達のがそう言いながらあたしの部屋に飛び込んできた。




















「ホント!?4日後・・・!?うわぁ、マジで!!??4日!?やばい、あたし、ええぇぇ〜〜うわど〜〜しよう、あたし」




「落ち着きなさいよ、結構久しぶりに会うんでしょう?」




「うん、すっげ久しぶり!!あ、あぁっ、あたし、や、痩せなきゃ・・!!だ、ダイエットしなきゃっっ」




「そんなのしてどーすんの、あんたもう十分ほそいよ」




「ダメだよこんなままじゃ、れ、レゴラス様くらいに細くならなきゃ・・・!!!」




「レゴラス様?何でレゴラス様?」




「この前、少しだけ喋ったんだ。そのときに、すんごい綺麗で細かったから」




「そ〜〜〜だよね〜〜〜レゴ様ってぇ、何かもう女の欲しいもの全てあの身体に持ってるよねっっっ顔もそーだし」





「あれくらい綺麗になったら、きっとアラゴルン様もあたしの事、すぐに連れ出してくれるよ、きっと」




「・・・・そんなにここから出たいの?寂しいよ」
















あたしがそう、ただ出る事だけを必死に考えて言ったので、は少し静かにそう言った。
















「ごめん、そういう訳じゃないんだよ、あたしだって寂しいよ」




「ホントに?」




「うん、もしかしたらあたし、泣いて結局アラゴルン様に”あたしやっぱ行けません!!”って言うかも。それくらい、ここはあたしにとって「家」なんだよ、ホントだよ、だって、一番の親友だし」











あたしがそうの手を握りながら言うと、はクスクス笑って「良かった」って言った。
































「そうだよ」とあたしは言いながら、半分嘘で、半分本当なその気持ちを心の奥底にしまった。




















だって、あたしが今望む事は「アラゴルン様と暮らす事」だけなんだから。




































「でも、ダイエットの目標が、”レゴラス様みたいになる”って、可笑しいよね。男だってのに」




「あははは!ホントそれ!」




、ホント嬉しそう。アラゴルン様に会える事が」







「うん、嬉しい」




















あたしは今度は心の底から頷いた。








待って待って待って待って、ようやく会えるんだ。嬉しくないはずがない。












































「あ、レゴラス王子!」




















の部屋を出て、あたしが一人で自分の部屋に向かおうとしていた時、庭でレゴラス王子が一人で座っていた。



















。こんにちは」





「何してるんスか?このクソ寒い時に」
















王子にこんな喋り方するのは、あたしくらいだろう。王子はそんな事気にもとめない様子で、微笑みながら立ち上がった。











「別に何も。少し外の空気が吸いたくなったんです」





「あぁ、何か会議でもあったんですか?」




「うん、まぁそんな感じ」





「大変ですね、4日後もまたあるってゆーのに」




「・・・あぁ、聞いたんだその事。・・良かったですね」
















あたしが頭をポリポリ掻きながらさりげなく言うと、王子は思いだしたようにそう言った。
















「いやぁでも、そんな、もしアラゴルン様がいらしたとしても、会えるかどーかなんてわかんないし」




「きっと彼も貴女を探しに来られますよ、何なら、会いにいくように僕が言っといておきますから」




「ま、マジですか!??あ、ありがとうございます・・!!」




「別にいいですよ それくらい。じゃ、そろそろ自室に戻ります」















あたしがもうお辞儀をしようとする間もなく、王子は自ら軽く辞令し、背を向けてさっさと行ってしまった。





































それくらい、初めの方の彼はどこかそっけなくて、冷たかった。





























































会議を翌日にひかえて、あたしは意味もなく「明日までに細くなるように」とか良いながら、館の周りを走っていた。















「あ、レゴッラス様〜〜!!おはよーございま〜〜〜す!!」




















ジョギング2週目に入ろうとしたその時、レゴラス王子がこの前話した時と同じ場所にいたので、あたしは叫んで手を振った。




















「・・・・貴女は、よく人の事を呼び止めますね」










彼は苦笑しながらそう言った。










「そーっすかね?」






「そうですよ」






「でも、ホント最近よく会いますよねっ!何でしょうかね?運命ですかね?」





あたしはその場で駆け足を続けながら、変にニコニコしながらそう言った。














王子はパッと笑顔になって、






「フ、そうかもしれませんね。君は可愛いですね」



と言った。











王子がそんな事をサラッと柔らかい笑顔で言うもんだから、あたしは顔を思いっきし赤くさせる。









こんなセリフをこの人から言われて、ときめかない女なんてこの世には絶対いないだろう・・・。








































「ジョギングなんて珍しいですね。してる人初めて見ましたよ」





「あー、あたし走るの好きなんスよ。王子も一緒に走ります?」





「ハハ、残念ながら明日の会議の為の準備があるんです。そろそろ失礼しないと」





「じゃ、じゃぁまた後で!」





「また明日」













































あたしは何となく王子が行ってしまってから駆け足を止め、ボーっと彼の後ろ姿を見ていた。




















何でだろう、いつもあの人と会った後は、寂しい感じがする。















「行かないで」、「もっとここにいて」って。叫びたくなる。

























好きとか、恋してるとかそんなんじゃ全然ないのに。・・・・・・・何でだろう。








































「こら〜〜!!!何止まってんの!!アラゴルン様が来るのは明日だぞ〜〜〜!!」





「わ、わかってるよ!!!!」




















遠く向こうで、友達がケラケラ笑いながらそうあたしに叫んだ。あたしの頭はその瞬間アラゴルン様一色に変わり、走りに専念した。






アラゴルン様が来るのは明日だ。 それが今一番、あたしにとって大切な事だ。



























































でも もし、あの時。








































あたしが、「運命」だとか言わなければ。










貴方が、「可愛い」だとか言わなければ。









































あたし達は、ずっと違う所に立ってたと思う。



















絶対、そう思う。

























  苺 第一章 終わり





















































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