ドリィム
りんご日記 ACT.3 〜花〜
「なぁんでそこで「悪者」になんの。アンタが」
レゴラスと話したその日の夜、あたしはの部屋にいた。
「・・・だってすごい醜いんだもん」
「アンタの顔が醜い事なんざ400年前から知ってるわよ」
「・・・・・」
「(しまった・・今のコイツにゃ冗談通じねぇ・・)」
あたしが俯いて黙ってると、は溜め息をついて座り直し、グシャグシャとあたしの頭を撫でた。
「ねー。恋をするオンナノコってのは、誰しも悪者になっちゃうんだよ。それは仕方ない事なの。
どんな汚い手使っても、手に入れたらこっちのモンだし、どんな綺麗な心持ってても、上手くいかないときはいかないんだよ。」
「・・うん・・」
「その綺麗なココロで好きな人を想い続けても、何もしなきゃその恋は終わっちゃうモンだし。
その点、は偉かったんだよ?ちゃんと自分の気持ちゆって。偉いよ。あたしはそう思う。絶対」
「うん・・・」
「悪者なんかじゃないよ・・・・は。悪いのはレゴラス王子よ。をフルだなんて。大した悪党よ。許せない」
「うん・・・ありが・・とぉ」
真剣な目でそう言ってくれるが嬉しくて、大好きで、あたしはついつい弱くなった涙腺をゆるませてしまう。
「泣くなよ〜〜〜〜〜頼むからぁ〜〜〜」
「〜〜あい、あ、愛してる〜〜〜〜」
「あぁ!?嬉しかねぇよ!」
「アル、あ、だけは、あた、あたしを捨てないで、ねぇ〜〜〜〜〜」
「わぁーったから離れて!ひっつくな!」
「ぐしゅぐしゅ・・うん・・安心した・・もうあたひ、ズビッ・・がいればもう何もいらないさよ・・」
「なぁ〜〜〜にゆってんのよ!!ってゆうか頼むから鼻水が口に入るまでに拭いて!!!!」
「・・・あたし、悪者じゃないんだよね・・あたし、悪いことしてないよね」
「まぁだそんな事言ってる・・。違うってば!!わかった?!」
「・・・・・」
「わかったら、返事!!!」
「・・はい・・」
あたしは真っ赤に腫らした目をタオルで押さえながら、改めてを心から好きだと思った。
「泊まってかないの?いいじゃん、いなよ今晩くらい」
「んーん・・帰るよ!父さんに連絡もしてないし。ありがと。バイチャ」
「・・ん。・・」
「え?何?」
「仮に、仮によ?あんたが悪者だとしても・・・あたしと、神様だけは、絶対絶対アンタ味方だからね」
「・・・うん」
「忘れんな。おやすみ」
味方に神様がいて、がいて。
それでもレゴラスが欲しいと思う、あたしは
悪者ではなく、欲張りモノなのかもしれません。
「レゴラス」
「あ・・」
「昨日は・・・その・・すんませんでした」
「・・・謝るのは僕だよ、ごめん・・」
「・・・・・レゴラス・・ごめんね」
「何が・・?」
「・・・・っ・・・何でもない。」
" ごめんね まだ好きみたいです "
出かかった言葉が喉でつまって、結局言えなかった。
レゴラスはまた困った顔をして、綺麗なその顔であたしを見つめた。
「あのね、レゴラス。あたしはね、」
「ん・・・?」
「あたしはね、打たれ強いし、・・・強いから。大丈夫」
「ハハッ何、何で」
「大丈夫だよレゴラス、だから、・・・・もうそんな困った顔しないで・・いいから」
「ー・・・・・・うん」
言いながらあたしは、涙をこらえてた。
" あたしは欲張りモノのくせに、弱虫だから、辛くて辛くて死にそうですー・・・"
なんて、弱虫だから、言えない・・・絶対、言えません
ー次の日ー
「あ、」
「あら、レゴラス王子。ご機嫌いかが?」
「まぁまぁだよ。そちらは?さん」
「こっちもそんな感じです。・・・・」
「?どうかした?」
「・・いぇ」
とレゴラスがある日館で出会ったのは、その次の朝の事だった。
はの事で、かなりレゴラスに敵対心を持っていたがレゴラスの有無を言わさない美しい笑顔にはも閉口する。
「お見合い、なさったんですってね」
「あぁ、うん。」
「いかがでしたの?ご結婚なさるんですか?その方と」
「ハハ、まさか。」
「・・・・なさらないんですの?」
「しませんよ」
綺麗な綺麗な顔で、冷たく笑顔でそう言い放つレゴラスを、はポカンと見つめ、また強気な声で続けた。
「・・・・あぁ、「心に決めた方」が、いらっしゃったんですっけ」
「・・・は?」
「・・・・・・違うんですか?」
「・・あーー、そういやそんな事も言ったっけ」
「・・・あぁ?」
レゴラスの気の抜けた返事に、は思わず素の声を出してしまう。
「冗談だよ。アレは。いつも付きまとう女の子達がガチャガチャ五月蠅いから言ってみただけ」
「そ・・でも、が・・」
は困惑して、思った以上に冷たいレゴラスにおどおどしながら言う。
「・・・・には、・・うん、そう言ったけど」
「・・諦めさせるつもりで、ですか?」
「・・そう、だよ。が僕を好きだって事は前から分かってたし・・いつかはハッキリ言わなきゃって思ってたから」
「何でなんですか?どうして、じゃ駄目なんですか!?」
つい感情的になったを、レゴラスは少し悲しそうな目で振り返った。
「・・・・は、僕のお姫様なんだよ」
「・・・・・へ・・?」
「可愛くて、大切で、すごく好きだけど・・・手に入れてしまうのが恐い・・お姫様なんだ」
「何、言って・・」
「僕の勝手な感情で彼女をフッたんだ。出来るモノなら抱きしめて、「僕も好きだ」って言いたかった」
「そん・・な、何言ってるんですかレゴラス様!わけわかんない・・!何です、勝手な感情って!!」
「には悪いことをしたよ。・・・でも、は強い。きっとすぐ立ち直って、もっといい男を見つけるよ」
「意味・・・わかんない・・・・」
「・・・そうだと思う。ごめんね。・・・このことはには言わないで・・じゃ。」
「待ちなさいよ!!!どーゆう根拠でが強いだなんて思ってんのよ!!!ちゃんと答えてよ!!」
とうとう王子にまでタメ語でキレ出したに、レゴラスは微動たりともせず、また少し悲しそうな笑顔で振り向いた。
「・・・・・・君は」
「君は・・・もし、人間を好きになってしまったら・・どうする・・?」
「・・・・・え?」
「僕らはエルフだから。何千年も生きるよね。・・・でも、は?・・・100年も経たないうちに死んでしまう。
それは・・僕にとって耐えられないくらい恐いんだ。死ぬほど、恐いんだよ・・・」
「・・・・・」
「耐えられないんだ・・考えただけで恐い。」
「・・・・そ・・・それなら・・の気持ちはどうなるんですか」
「・・・え」
「は、100年より短くしか生きられなくて、もしそれでも、それでも、100年ずーーっと貴方の事が好きで、
でも結ばれないまま死んでいってしまうとすれば・・?私達は・・何千年も生きるから平気よ。時間があればあるほど、傷だって
浅くなっていくもの。でもは、あたし達よりずっと生きる時間が短い・・・傷も治らないうちに死んじゃうかもしれない。
そんなの不公平だわ。短いんだから、の命は短いんだから・・だからこそ幸せにしてやりなさいよ!!!!!」
は肩を震わせて、レゴラスをきつく睨みながらそう半泣きで叫んだ。
レゴラスはそんなを見つめて、ただただ立ちつくしていた。
「・・・・・友達も恋人も一緒よ・・・あたしだって、初めてと出会って、仲良くなって、好きだと思うと同時に恐くなった。
この子はいつか、死んでしまうんだ・・・って。・・・悲しかったけど、あたしはの一生の中のひとつの思い出になりたかったの。
だから悲しみなんて耐える。そんなの、と一緒にいられた時間に比べれば、悲しみなんて軽いもんだわ。
あたしは、もしを知らずに、と仲良くならずに生きて来たなら、そっちの方がよっぽど悲しい事だと思うから」
「・・・・・・そうだね・・」
「・・・でもね・・にとって人生で大切なのは、あたしより貴方よ。きっと。大袈裟かもしれないけど、の幸せは、全部全部
貴方が持ってんのよ。そこらへん、理解して」
「・・・・・・・・」
「王子様に向かって偉そうな口いっぱい聞いちゃってごめんなさい。・・・でも、思った事を言ったまでですから」
「・・・フ、いいんだよ。有り難う」
「・・・・あたし、王子のその変に冷めたとこ好きです。顔と性格のギャップにも惚れたのかも。」
「クス、そうなのかな」
「じゃ」
「・・・・・ありがとう」
" あたしは、もしを知らずに、と仲良くならずに生きて来たなら、そっちの方がよっぽど悲しい事だと思うから "
もうすぐ、花が咲く季節ですー・・。
りんご日記 〜花〜 終わり
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